outline

大友克洋による日本の漫画。講談社発行の漫画雑誌『週刊ヤングマガジン』にて、1982年12月20日号から1990年6月25日号にかけて連載。
第三次世界大戦後の近未来の東京を舞台に、アキラと呼ばれる強大な超能力者を巡り軍隊やゲリラ、暴走族たちが戦いを繰り広げる。
また、近頃では2020年東京オリンピックや福島原発の事故、さらには未だ起きていない東日本大震災まで予期していたのではないかと話題になっている。
AKIRA 単行本

theme

世界のアニメ界・映画界に影響を与えたと言われている本作品だが、その魅力はなんだろうか。もちろん、その作画やストーリーも魅力の一つだろう。
だが、私が注目したいのは「読者に考えさせる力」を持っている点だ。
本作を読んだ人の多くは、大友氏のメッセージを探そうとしてしまう。単なるSFストーリーではなく、きっとその奥には筆者の意図するものがあるのだろうと。 そして同じように、私も深読みをしてみようと思う。

reference

まずはネット上で見られる意見を紹介したい。

ビッグバンや、陽子崩壊(ビッグクランチ時に起こると言われている)と言う言葉をつかっている点で、破壊と創造の力こそAKIRAが得た力なのでは?
(中略)
原子力のチカラを破壊に使った原爆と電気に変える原発。似て非なるものですが、今ではある程度人のチカラでコントロールできるようになって来ています。 今の科学力はDNAを触る事も出来るようになり、この世を神が創造したとするならば、その神の領域に近づいているのかも知れません。

http://munchen-stil.com/other/akira-comic-purchase.html

世界中いたるところで復興が行われています。
AKIRAや鉄雄の力は人間が制御できない力、つまり核、 そして地震、津波などの天災や人災を例えているといわれています。
(中略)
新しい街を自分たちで作り、自分たちのことは自分たちで守る、戦う。
そういう未来を選択することもできるし、もう始まっている。
AKIRAから改めて力強いメッセージを感じました。

http://tensaychang.hateblo.jp/entry/2015/09/18/055338

AKIRAも、以前の代表作である童夢にしてもそうですが「とにかく凄いビジュアルを魅せる」のが大友先生の目的であり
SF的テーマや設定などはその為の方便ではないかと。勿論SFとしても凄く面白いんですけど。
(中略)
夏目房之介氏だったか、アキラの主人公は金田や鉄男でなくネオ東京という都市であると言われていて腑に落ちた覚えがあります。
テーマがあるとすれば都市すなわち文明の崩壊と再生ってとこでしょうか。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1210918207

宗教や宇宙観と結びつける方もいれば、そもそも作者は特にメッセージを込めていないという方まで、みな様々な考えを持っていることがわかる。

consideration

-- 本作内での争いは、AKIRAという少年が科学者によって強制的に進化させられ、ビックバンを起こしてしまうほどの力を得ることになってしまったことが発端となっている。
このAKIRAという存在は、人間の技術の発展による創造物と言えるだろう。その創造物が自らの手に負えなくなり、人間の破滅を招いてしまう。
上述した意見にもあったように、この事態は現実に起こっている。福島原発の事故だ。人間の技術によって生み出された原子力の副作用は、人間を滅ぼしかねない力を持っていることを実感した出来事だ。
作者がこれを予期していたとは思わないが、現実に起き得ることだと警鐘を鳴らしていたとは考えられるだろう。
今後もこのような出来事が繰り返される可能性は、十分あり得るだろう。それを回避する方法が、デモなのか信仰なのか、はたまた避けられないことなのか。
なんにせよ正しい情報を身につけ、自分の考えを常に構築しておくことが大切ではないだろうか。

conclusion

さて、私自身も作品のテーマを考えて楽しんでみたが、以下に大友氏本人の過去のインタビューを引用したい。

だから、だれでもそういう力(超能力)を持っているんだ、ということが『AKIRA』のメッセージかといわれてもねぇ……そんなメッセージなんて大層なものはないんだし……う~ん、ま、そういっちゃったほうが話がまとめやすいってだけのことでさ。ちょっとヒューマンな話になったのも、そうでもしないと、あまりに殺伐をしすぎているからってだけで……うん、それだけのことなんですよ。

科学の現実を人間が咀嚼しきってない気がするね。昔はもっとスピードが遅かったでしょ?でも、いまは咀嚼する前に新しい物が出てきてしまう。企業が大金をつかっているからだと思うんだけど。今の科学というかテクノロジーは個人レベルに下がって、家庭に入り込んできてる。

映画というのは、何かを感じるということがイチバン大切なんだ。言葉でそれを伝えてしまったらダメ。非常に抽象的なものを表現してるんだからさ。見たあとに、なんだかわからない、説明できないようなメッセージが残らない映画はダメだと思うんです。

大人はすぐそうしたがるけどね。分析しないでいられない(笑い)。でも、作る方はもっと曖昧なものを作ろうとしているんですよ。

http://d.hatena.ne.jp/soorce/20080203/p1

-
最後に、こういったSF作品は様々な解釈ができることが魅力の一つだと改めて感じた。
この記事を読んで興味を持った方は、是非AKIRAの映画や漫画を見ていただきたい。そして未来に想いを馳せてみてほしい。