兵役法と韓国アイドルについて

兵役法とは

韓国は1950-1953年におきた朝鮮戦争により、現在朝鮮民主主義人民共和国と冷戦状態である。そのためすべての韓国の成人男性には、一定期間軍隊に所属し国防の義務を遂行する「兵役」義務が課せられている。戦地を想定した厳しい軍事訓練とともに、通信、調理、運転、広報、軍事警察、夜間警察などの業務がある。「入隊の期限は満28歳までで、服務期間は1年半から2年である。通常、韓国の男性は高校卒業後~満22歳までに入隊する人が多いが、アイドルや俳優といった芸能の仕事に就いている人は「慣例」として入隊の延期が認められており、入隊期限ギリギリまで活動をする場合がほとんどである。しかし、2018年の兵役法改正によりこの慣例が認められないケースが発生する可能性があると言われている。₁

兵役延期が認められるケース

延期が認められるケースとして「大学院への進学」であげられる。私が推しているSEVENTEENのメンバーも2020年に大学院に進学をした。 兵役法施行令第124条- 大学院修士課程(2年制:26歳、2年以上:27歳)- 大学院博士課程(28歳) 「芸能人だから延期を許可する」という慣例が認められなくても、一定の年齢までに大学院に進学すれば合法的に入隊延期が認められるようになったのだ。そのため、韓国では一定数のアイドルが「入隊対策」として大学院に進学することが増え、ケースによっては国民から不快感を示されることある。BTSの所属事務所ハイブエンターテインメントも、ジョングクを除くメンバーは、大学院に在学中の為、2年以上の修士課程進学者は最大29歳になる年の末日まで法廷入隊延期が可能』と説明し、『ジンは2021年末日まで兵役法による入隊延期が可能だと判断している。』と公式に明言したのだ。アイドル達の学問への興味を一概に否定することはできないが、BTS法案可決前のことなので、メンバーの入隊事情ももちろん考慮されていると言えるだろう。²

BTSがきっかけとなった兵役法改正

2020年12月の韓国兵役法では多大な功績を残したKPOPスターなどに対し以下のように入隊延期が認められた。 「18歳から28歳までの健康なすべての韓国の男性は、約20ヶ月の間に韓国の軍隊で服務しなければならない。しかし、特定のポップスターは、文化部長官の推薦を受けた場合、軍服務(入隊)を30歳まで延期することができる。」というものだ。そのため、兵役の「免除」ではないが、28歳のうちに入隊をしなければならないところが30歳までになったのだ。²

条件

この法律が適用される条件として「文化体育観光部長官が大韓民国の位相と品格を高めるために大きく寄与したと認めて推薦された大衆文化芸術分野優秀者」とあるが、具体的な基準はなく曖昧なのが現状である。²

BTSが残した大きな功績

2017年~2019年:ビルボード・ミュージック・アワード ソーシャルアーティスト賞

2018年:花冠文化勲章受章

2018年:「第75回国連総会」で特別講演者として2度目の演説

2019年:ビルボード・ミュージック・アワード トップデュオ/グループ賞

2020年9月:「Dynamite」で韓国人アーティスト初のビルボードのシングルチャートで1位

2020年1月:韓国アーティストとして史上初グラミー賞2020でパフォーマンス

2020年2月:VMAでベストポップ賞「をはじめとす計4冠を獲得

国内では45回以上の大賞受賞、海外有名アワードでも約20回の受賞という驚異的な功績を残しており、他のグループが入隊時期延期の対象となるか議論される際は、このBTSの功績と比較されることは避けられないと考えられ、今後具体的な基準として「韓国大統領賞の受賞」などが検討されていて、今後も改正箇所はアップデートされていくとみられる。³

反応

BTSの韓国のファンは兵役について「行くなら行けばいい。私たちは待てばいい」とする声が多い。ツイッターでは「韓国で生まれた以上その責務を果たすべきだ。」や「メンバーが言ったことを支持する」などとメンバーの気持ちを尊重したいという投稿があふれている。メンバー自身も兵役について当然の義務との発言をしている。しかし、韓国政府としてはBTSがもたらす経済効果を意識してしまうようだ。⁴

まとめ

今回、韓国アイドルと韓国の兵役法について調べた結果、世界的活躍をしているBTSにより、韓国の法律は変わろうとしていることが分かった。今までも賛否両論していたKPOPスターのための法改正は「貴重な20代の時間」というのは誰にとっても当てはまるからこそ様々な声が聞かれるのだとおもう。2年間という短くも長い時間が、韓国の芸能界では随分と事情が変わるのだ。除隊後も30代となっても変わらず人気があるsuper juniorのように、「アイドルのピークはいつか」という概念も変化していると思われる。KPOP界の先頭を走るBTSが、今後どのような影響を与えるか注目していきたい。

¹KONEST「徴兵制~韓国の軍隊制度~」2021年2月23日

²WOW!Korea「韓国の兵役法改正について解説!~アイドルの入隊時期、条件~」2020年12月4日

³ELLE「数字で検証!BTSの何がそんなにすごいのか2021年7月9日

⁴NEWSポストセブン「BTSは行くつもりでも、韓国政府が兵役免除をあきらめきれない背景」2021年12月26日