#25『無垢 - muku』



もう歩けないなら その足を捨てなさい

もう繋げないなら その腕を捨てなさい



もう重たいよ 嘆くなら愛を捨てなさい

もう必要のない 憂いを捨てなさい

もう喋れないなら その口を捨てなさい

私を見れないなら その目を捨てなさい



多分前から気付いていたんでしょう

あなたはいつでも上の空なんてことも

私、意外と鋭いんだよ

すべてが見えてしまって仕方ない



春の風に吹かれて酔い覚ませば

花の咲く肌に腫らした目に浮かぶ

宵、酔い、酔いどれた

正直なあんたが好きなのに



この道ふらつき歩けば歩くほど

消えてしまうのは分かってるのにね

慣れぬ厚底には 分かりゃしないでしょ?



応えておくれ 

せいぜい愛ってのは売り物なのかい?

金で買えるものならあの子を買うわ

それができないから困っているのに



とっくのとうにさ 知った気でいたけど

やっぱり他人のことまでは読めないね

わが身正しいと思う内は

全部出鱈目になっても気付けない



夏の風に吹かれて酔い尽くせば

道に咲く花に凝らした目に浮かぶ

中まで知り尽くしたい

後などないのに



紅葉の葉がはらり

揺らした水面にあなたが口づけて

あぁなんて儚き刹だ

廓濡らす秋模様



冬の枷に疲れて身を投げれば

迫る水面に 面影を映して

おいおい泣いたって

遅いことくらい知ってるのに



この道ふらつき歩いてきたけど

先で待つのはいつでもうつつばかり

私のことなんて 分かりゃしないみたい