#5『日進月歩 - Nissin Geppo』



波のさらう夜 ひまわりの通り 夏の海岸通り

山瀬の名残 路肩にアザミ 追い風 燻んだ



羽虫の音がさざめく途中 草木かき進めていく

ぬるくそよぐ 肌触りを あの日落とした髪飾り



裸足で踏み出す川瀬 潮煙に瞬いていた

別れを告ぐ潮風が吹く 会いたい



夜にほどけて残るのは 明るみに咲いていた花

息が零れた傍から 陽だまりの奥に消えてく

しなる声に傾け 鈴の音さらいきるように

一人の夜に 髪引くように 言葉を吞んでいる

僕の事 夏の事 雨の音 掠れたあの日の事



ひまわりのほとり 捨ててきた要 貴方の事忘れて

彼岸花を伝う春 思い出す熱帯夜



別れたり戻った 新たな旅路の果ては

愛さえ空回りして 一人で居たいふり

していたんだ



撫でた造花に 灯す煙と全て 隠せたら

まいっている



鬼の声降る路地裏 引いた手掠めた空が

石の匂い漂わせて 落とした粒は冷ややか

浸る袖が乾けば 景色も滲んでゆくのかな

潮時の候に 磯の香り 誰かを呼んでいる



夕焼け小焼け 夜明けに「会いたい。」

なんてざらでさ

窓の傍に呟けば 霞んで消える漫事

肌を伝う杞憂に 何かを想うでもなく

日脚追うように 進めるように 月の方へ歩いていく




音源2021