#1『鬼参り - onimairi』



ちょいと、其の人 歩みを据え

鳥居の番に証を出せ

急く足が擦る 海砂の声

お前さんの臓が嬉しそうだ



鬼さん鬼さん こちらへおいで

癪撫でる雲 意を消し垂らす糸

恐れ二合半も無いにしろ

まだまだ先は霞んでいる



もういいよ

だから笑って、庇っている

のに痛い業を買って、売り裁いて

もういいよ

だから代わって、攫ってほしい

「いいよ」の合図を待った



行きはよいよい帰りはこわい

衣がいらう明るみの小町

誰も永く計らえない

頬を下る空模様

あぁ



鬼さん鬼さん こちらへおいで

果ては儚げに 待ち人のように

此方見遣る目に映えるのは

まだまだ跡を数えている



もういいよ

だから笑って、庇っている

のに痛い業を買って、売り裁いて

もういいよ

だから代わって、攫ってほしい

「いいよ」の合図を待った



鬼さん鬼さん この手を引いて

待てど暮らせど過ぎる日々は糸

途切れ結んではまた途切れ 

私は



よく食べて眠り朝を抱いて

明日を約束されても

満たされない哀れな鬼の子



合図が鳴った