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中島洋介インタビュー

 

家庭用ゲームソフト企画・開発を行っている、株式会社サイバーコネクトツーのサウンドデザイナー、音デ3期生「中島洋介(なかしまようすけ)」さんとZOOMでインタビューを行いました。

インタビュアー 山下翼(つばさ)

(一同)よろしくお願いします!

 

Q(つばさ)コロナの影響はどうですか?

 

A(中島)春から夏にかけては在宅で仕事をしていましたが、今は時差出勤をしています。仕事に影響は無く、いつもと変わらない感じですね。

 

Q(つばさ)どんな仕事をされていますか?

 

A(中島)肩書としてはサウンドデザイナー。
効果音作成を中心に音声の音質調整や、音をどんな風に再生、演出するかの設計、実装を行っています。基本作曲以外のサウンドに関わる部分はすべてやります。

 

Q(つばさ)携わったゲームタイトルはどんなものがありますか?

 

A(中島)『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4 ROAD TO BORUTO』『ドラゴンボールZ KAKAROT』『.hack//G.U. Last Recode』『戦場のフーガ』『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』
以前勤めていた会社でも、みんなが知っている色々なタイトルに携わってきています。

 

Q(つばさ)いきなり「音付けて」とか言われても戸惑いますが、どうやって選定していますか?

 

A(中島)物語の世界観に合わせた音を選ぶことかな。
こうしよう、というのが明確に分かっているものは作業の進みが速いですね。
映像が出来てない状態で何かを作るときは、とりあえず手探りで音をはめるけど、やり直しになることが多いかな。

 

Q(つばさ)この仕事を選んだ理由は?

 

A(中島)好きなことを追いかけてたらたどり着いたって感じです。出会う人やチャンスに恵まれてたと思ってます。諦めが悪かったのもあるかもしれません。

 

Q(つばさ)仕事の楽しい部分は?

 

A(中島)全部(笑) もう好きに囲まれているなぁって毎日思います。自分が作った音が実機上で動作するのは毎回感動しますし、自身が提案したアイデアも積極的に採用してくれる環境です。

 

Q(つばさ)では、逆に大変な部分は?

 

A(中島)何かを直接作るのではなく、リストやスケジュールとにらめっこしている時は辛いときがありますね。忙しくても自分が何かを直接作ってるときは煮詰まっていたとしても気持ちが上向きになりやすいです。

手を動かしてるとアイデアも浮かぶし、実現するには今自分に何が足りないかが見えてくるので、しんどい時でもシンセいじりや音遊びみたいなのでもいいからなるべく手は動かしたほうがいいなと思ってます。

また、常に新しい技術が生まれる業界なので、勉強しつづける必要があるのも大変ですね。

サウンド課は人数も少なく、社内全てのプロジェクトに関わることになります。(プログラマー2人、コンポーザー1人、デザイナー2人)

当然考えることも多いし、プロジェクトによって世界観が異なるので頭を切り替えるのが大変です。

 

Q(つばさ)残業とか多いですか?

 

A(中島)基本は定時で帰る事が多いですが、去年は複数のプロジェクトが重なることが続きましたので毎日2~3時間程度は残業する日が続きました。それでも休日出勤はありませんでした。

 

Q(つばさ)ズバリ、給料は?

 

A(中島)一般的なサラリーマンの平均くらい(笑)

 

Q(つばさ)会社の環境、設備や社員の雰囲気など教えてください。

 

A(中島)情熱で生きてる人ばかりでみんなパワフルな印象です。会社に入る前は物静かな人が多いイメージでしたが、身近な人達は話好きな人が多いですね。

特にサウンドは関西の人が多くて「笑い」にうるさいのがたまにプレッシャーですね(笑)

使ってるオーディオインターフェースはAVID MBOX Pro、DAWはもともとVegasとProToolsを併用していましたが、今はReaperがメインです。

MIDIキーボードはmicro KEY、シンセサイザーはMassiveやUVIのSE系シンセを中心に色々気分によって変えています。

エフェクターはWavesが主体ですが、それ以外だとMaag EQとかReprikaとかはよく使います。最近はLA-2A系のオプトコンプがお気に入りです。

iZotope RXはないと仕事にならないかもしれない。休みの日はフィールドレコーダーを片手に音素材を探しに行くこともあります。

あとExcelは音楽関係以外でも結構な頻度で使うので、みんな絶対勉強してたほうがいいぞ!(笑)

 

Q(つばさ)サイトで拝見しましたが、何故海外支社はモントリオールなんですか?

 

A(中島)優秀な人材の確保が目的です。
すでに大手ゲーム会社も多く、他の国・地域と比べかなり多くのゲームクリエイターが暮らしていること、英語とフランス語のバイリンガルな土地柄のため、英語圏からもフランス語圏からも採用できるメリットがあること、ゲーム産業向けの手厚い助成金があることが理由だそうです。(弊社人事部より)

 

Q(つばさ)スーパーゲームスクールって何ですか?

 

A(中島)ゲームクリエイターになりたくても環境等の理由で諦めていた方のために、無料で指導を受ける機会を提供したいという試みですね。

ただし、合格基準も厳し目です。とにかく「本気度」が試される環境だと思います。

でも「本気」であれば趣味クリエーターがプロになれる絶好のチャンスだと思います。実際にこれまでに10名近い方がクリエイターとなっています。(弊社人事部より)

 

Q(つばさ)どうしてサイバーコネクト(ツー)なんですか?

 

A(中島)創業時はサイバーコネクトという社名でしたが、創業社長がいなくなってしまって、今の社長が引き継いでサイバーコネクト”ツー”になったそうです。(弊社人事部より)

 

Q(つばさ)では、学生時代のことを聞かせてください。楽器は何をされていましたか?

 

A(中島)さわれる程度であれば鍵盤、ベース、ギターですが基本的には浅く広くです。ギターはカポ使って伴奏しながら歌える程度です。現在はウクレレにはまっててほぼ毎日ひいてます。

 

Q(つばさ)一人暮らしでしたか?

 

A(中島)一人暮らしでした。片付けは苦手でしたが大学に近くて溜まり場になりがちだったので割と片付いてたと思います。

 

Q(つばさ)好きだった授業は?

 

A(中島)音楽に関わらずパソコンを使って何かを作る作業が全部好きだったので、音デ関連の授業は全部好きでした。

でも、インテグで曲を作るのはちょっとしんどかったな・・・。自分にとっての作曲って思い描いているものがどうしても形にできなくて、作り始めるといつまでも完成しないんですよ。自分でイイなって思えるものがどうしても作れない。今となっては作曲はそんなに好きじゃなかったんだろうと思います。好きだったらもっと作ってるし、耳コピも沢山やってたはずですもんね。

とはいえ音楽が好きなことは変わらないので、今でもたまーに発作的に作るときもあります。

 

Q(つばさ)藤原先生との思い出は?

 

A(中島)ちょうど藤原先生が大学に講師として呼ばれたのが私達の世代でした。先生も手探りだったと思うのですが、好きに色々作らせてもらった思い出があります。

個人のサイト制作が一区切りついた時だったかな・・・私が突然卒業制作アルバムのジャケットイラスト書き始めて、これをみんなで話し合いながらこの時間で作りたいって言ったら授業に取り入れてくれました。

当時は授業で習ったFLASHを使ってアニメを作るのにハマっていたのですが、作ったものを先生も褒めてくれて、卒業後もFLASH制作の仕事をいただきました。

 

Q(つばさ)新名先生との思い出は?

 

A(中島)「商品を作る」ことを考える機会を沢山もらいました。作曲や映像、録音や撮影など幅広い分野で機会をもらいましたが、学生のときに自分の作品に値段をつけられるという経験はとても大きいですよね。

先生からかけてもらった言葉で「夢はいきなり高く望むのではなく、段階的に叶えていくこと」と、「未来のことを考えすぎず、目の前のことに一生懸命向き合う。次にすすむタイミングはどんな形であれ、誰かが必ず教えてくれる」は社会人になった今でも悩んだときには思い出します。覚えてますか?w

卒業してからも転職の際に相談に乗ってもらったり、つい最近でもリモートのシステムについてZOOM通話したりと定期的に接点があるのは嬉しいですね。

ただ当時は特に「やりたくない」ことには怠け者だったので沢山迷惑掛けたと思います・・・。

 

Q(つばさ)その他印象に残っている先生は?

 

A(中島)音デの先生はもうみんな大好きです。全員の距離が近かった印象です。どの先生もなんでも相談に乗ってくれますし「やりたいこと」を訴えるとかならず応えてくれました。

問田先生は私が今やってる仕事に近いお仕事をされていると思うので、改めてお話したいですね。

音デ以外だと飯塚先生が強烈だったな・・・。まだいらっしゃるのかな・・・?動きがとにかく面白いし、叱りと褒めのバランスが絶妙でした。

あの先生じゃなかったら理屈っぽい和声の授業があんなに面白く感じなかったんじゃないかと思います。

 

Q(つばさ)学生時代一番力を入れていたことは?

 

A(中島)「好きなことに打ち込む」です。当時は何になりたいとかはなくて、自分にができることが増えるのが嬉しくて色んなことに手を出してた気がします。「高クオリティ」を追い求めるんじゃなくて、「出来ることを増やす」みたいな。結果的に別の分野で学んだことがどこかでつながってて、応用が効いたりするときは気持ちよかったです。

特に音デでは「自身がやりたいことを伸ばす」事を先生方がサポートしてくれる環境という認識でした。「今何がやりたいか」が明確であればこんなにいい環境はないんじゃないかと思います。そして音楽や音が好きであればそれを中心として、やりたいことのピントをあわせられる環境です。作陽は音楽大学ですが、音デでは「作曲」「演奏」だけに縛られることもなく、広い視野で音を中心としたクリエイティブを考えられる自由な学びの場所だと思ってます。

特に音デには変なやつが多いから刺激も多いですしね。(笑)

 

Q(つばさ)アルバイトはしていましたか?

 

A(中島)決まったバイトはしてませんでした。先生から紹介されるお仕事とか、長期休みのときは実家の青果店を手伝ったり、たまに音楽イベントのスタッフをやってましたね。

 

Q(つばさ)恋人はいましたか?

 

A(中島)いました。現在の妻です。

 

Q(つばさ)出身地はどこですか?

 

A(中島)大分県佐伯市です。大分県で一番広い市です。山ばっかりですが。

 

Q(つばさ)好きなゲームは?

 

A(中島)基本的にはシンプルなゲームが好きです。特に自身のテクニック上達が実感できる作品が好きですね。

物語がない音楽や演出に特化した作品も好きで『風ノ旅ビト』なんかも好きです。学生の時は『beatmania』を中心に音ゲーもハマってました。

逆に物語が秀逸な作品も好きで最近のタイトルでは『Detroit:Become Human』、『UnderTale』、『龍が如く7』あたりが特に印象に残ってます。オススメですよ。

最近では『Ghost of Tsushima』、『天穂のサクナヒメ』あたりがお気に入りですね。

 

Q(つばさ)好きなアニメ・漫画は?

 

A(中島)アニメは最近見たのだと『波よ聞いてくれ』『メイドインアビス』『Vivy -Fluorite Eye's Song-』『オッドタクシー』がおもしろかったです。

漫画は最近だと『ダンジョン飯』や『惑わない星』『ブルーピリオド』がお気に入りです。

古い作品ですが『ヨコハマ買い出し紀行』も最近読んだのですが強く印象に残ってます。自分でも好きな作品の傾向はよくわかんないですね。

どんな分野でも言えますが、新しいとか古いとか流行とかはあんまり関係ないと思ってて、どこかで出会いがあって、自分がいいと思えたら嬉しいなと思ってます。

突然池上彰や馬渕睦夫のジャーナリズム書とかホリエモンのビジネス書を読むこともあります(笑)

 

Q(つばさ)『鬼滅の刃』は見ましたか?

 

A(中島)もちろん見ました。『鬼滅の刃』関連ですが、制作に携わった『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』が2021年10月14日に発売なのでぜひチェックしてください(笑)

 

Q(つばさ)前職についてどう思っていますか?

 

A(中島)<NHKの音響効果時代>
最初の職場に関しては「俺がやりたいことはこれじゃない!」って気づかせてくれたのが大きいですね(笑)自分が作った音がテレビで流れるのは感動的でしたが、どうしても違和感を感じる毎日でした。
ある日ゲームサウンドの募集を見つけて何の前触れもなく辞表を出すことになります。まだ研修期間中だったのに(笑)

<某ゲーム会社時代>
次に入った会社からゲームサウンドに関わることになりました。ほぼ素人同然の身に1からゲーム制作について学ばせていただきました。
今も業界で仕事ができてますし、当時の経験は今も活きています。今考えても本当に運がよかったと思っています。
当時の上司から今の会社に転職する前に「今の環境では手伝い程度の機会しか与えられない。もっと前線で活躍できる環境に身をおいて多くの経験を積め!」と言われて追い出されました。(笑)

ちなみに当時お世話になった人たちとは現在でも交流があり、今でもたくさんのことを教わっています。

 

Q(つばさ)よく聞くアーティストは?

 

A(中島)もともとはテクノやインスト、サントラばっかり聞いてて、流行り物は避ける捻くれた性格だったんですが、最近ではポップスを聞く機会が増えましたね。『Official髭男dism』『米津玄師』『millennium parade』なんかをよく聞いてます。

洋楽だと『Clean Bandit』、『Ed Sheeran』、『Billie Eilish』、
インストだと『高木正勝』、『ゴンチチ』、『ショーロクラブ』なんかを聞いてて、
映画音楽だと『村松 崇継』、『Hans Zimmer』あたり・・・統一感ないでしょ?

外出先で出会った曲をShazamで調べて聞き込むなんて偶発的な出会いも好きです。結局良いと思うものはなんでもいいと思ってます。

 

Q(つばさ)最後に今後の目標を教えてください。

 

A(中島)知らない誰かに影響を与えられるような演出を作ることです。
今は有名タイトルで行われているような最新の演出を、自分ならどう再現するかのように後追いすることで必死ですが、「あなたが作ったこの作品に触れてこういうものを作りました」って言われるようなエネルギーになる作品を作りたいですね。

ただ過剰な演出は作品にとっていい結果をもたらすとは限りません。

バランスが難しいところではあるのですが、一番大事なのは今作っている作品の魅力をお客さんに喜んでもらえるように最大化することだと思います。

アイデアの質は重要ですが、数だけであればある程度の経験や志がある人が集まればアイデアはいくらでも出てきます。しかしアイデアをストレートに実現するためには広い知識や経験を身につけるしかありません。(アイデアは素人でも生み出せますが”実現”はプロにしかできないと考えています。)

そのための準備や挑戦は続けていき、ここぞというときに力を発揮できるようになりたいです。

とりあえずはUnreal EngineやReaper、iZotopeなど業界でスタンダードとされるソフトの機能をすべて使いこなせるようになることが間近の目標ですね。もちろんExcelも(笑)

 

(一同)ありがとうございました!