著者の柴那典(しばとものり)氏が「あとがき」に書いておられるが、音楽史的な参照点を踏まえてボーカロイドの現象を語ると云うスタンスの書籍は、確かになかった。
「サード・サマー・オブ・ラブ」と云うキーワードが随所に出てくるが、2007年は音楽史にとって運命的なタイミングであり、そこからの6〜7年間は「サマー・オブ・ラブ=時代を変える熱気(社会現象)」だったと私も感じる。
終章に書かれたクリプトン・フューチャー・メディア社の伊藤博之社長の言葉が印象的だ。
「(中略)かつては鉄腕アトムのようなアニメやSF映画があって、その物語に憧れて科学技術を志す人たちがいた。そして今、幸いにして『初音ミク』という一つのシンボルのようなものは生まれた。なので、僕らの立ち位置としては、音楽テクノロジーを通して未来をポジティブに設計していきたい。それに尽きると思っています。音楽を通して、多くの人に機会を提供して、クリエイティブな創作活動のきっかけを提供していきたい。僕らにできるのは、それだけですからね。(p.287-288)」
至極納得であり共感する。
音デの諸君、是非読んでみてほしい。
ボカロとは何か、いやクリエイティブとは何か、改めて考えるきっかけとなるだろう。
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